勝手解釈・自己基準の塗装業者

「正しい塗装」とはどういうものか

構造クラック

塗装業を職業とするのに資格は要りません。国の法律で、500万円以下の工事であれば建設業の許可がなくても誰でも工事できるからです。そして、大工さんや左官さんの中でも、最も独立しやすいのも塗装業なのです。塗装業にはあまり工具が必要ありません。手塗りがほとんどなので、ローラー、刷毛、塗料を混ぜるマゼラー(攪拌機)、あとは車さえあれば独立が可能です。

もちろん立派な塗装業者もたくさんいますが、私の経験では「知ったかぶり」の塗装業者に出くわすと痛い目に遭います。クレームの種類を大きく分けると、まずは悪徳業者に当たってしまった場合。これは最近はだいぶ減っているようです。次に、優良施工業者に対するクレーム。悪い人達ではないのですが、勝手解釈・自己基準業者が増えてきているのです。この人達はきちんとした施工をせずに、自分で勝手に解釈してしまいます。

例えば外壁の塗装工事では、様々なメーカーの特殊塗料が出回るようになってきました。以前の塗料はだいたいアクリル・ウレタン・シリコンの3種類だったのですが、最近ではフッ素塗料、ピュアアクリル塗料など、新素材の樹脂が増えています。さらにインターネットが普及して、皆さんが塗料のことを調べるようになりました。するとお客様の要望も多様化し、ますます様々な塗料が出回るようになったのです。今では耐用年数が15~20年の塗料を勧める業者が増えています。ところが、このような状況はこの5年ほどで生まれてきたものなので、職人さん達の技術や知識が追いついていない部分があるのです。すると勝手解釈・自己基準になり、結果として不良施工に結びついてしまいます。

それでは、「正しい塗装」とはどういうものなのか。
塗装は料理のレシピに似ています。どんなに美味しそうな食材があっても、調理人の腕によって味は変わる。同じように、どんなに良い塗料を使っても、職人さんの腕、塗り方によって仕上がりが変わってくるのです。

塗料メーカーのカタログには「標準塗装仕様」が記載されていて、最低限4つのことを守るようにと書かれています(カタログは業者の方が持ってきます。持って来ないところは論外なので、頼まない方が良いでしょう)。市販のカレールーの裏にカレーの作り方が載っているようなものです。

まず「塗り回数」。普通は3回塗り(下塗り1回・上塗り2回)が基本です。次に「使用量」。塗料は厚く塗ればいいんじゃないですか?という人がいますが、厚く塗るとひび割れます。薄く塗ると長持ちしません。次に「塗り重ね乾燥時間」。下塗りと上塗り、上塗りと上塗りの間に設ける間隔のことです。最後が「希釈率」。薄めて良いパーセンテージが決まっています。これらすべてを守らないと不良施工になってしまいます。

この中で最も手を抜かれやすいのが乾燥時間です。乾燥時間を確認するのはなかなか難しいですが、気を付けておいていただきたいと思います。
この項、次回に続きます!

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[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

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