有資格者による耐震診断で安心の住まいを手に入れよう!
耐震・補強をする前に
持ち家、賃貸マンション、分譲マンションなど、住居形態は違っても、そこから発生する悩みに差はそれほどありません。近年、最も注意すべきは地震にまつわる問題でしょう。地震に関しては「起こってからでは遅い」とわかっていても、手立てを講じるのが遅れてしまいがちです。
まず留意しておいていただきたいのは、お金をかけるだけが耐震の備えではないということです。誰にでも簡単にできる耐震対策の第一は「2階で眠る」ということ。1階で眠るより確実に安全度が増します。
阪神淡路大震災では多くの方が亡くなられました。中でも多かったのは家の倒壊による被害。倒れ方の特徴を見ると、1階が潰れて2階が残るパターンが数多く記録されています。つまり、1階に寝ているより、2階で寝ていた方が助かる確率が高いのです。耐震・補強をする前に、できるだけ2階で眠るようにしましょう。
もちろん、耐震診断・耐震補強をしっかりと行った人は1階でも安心して眠れると思いますが、診断をしていなかったり、家の強度のことをまったく知らないのであれば、階上で寝られた方が良いと思います。
一度は耐震診断を受けておこう
中には、19年間一戸建てに住んでいながら耐震診断のことすら知らなかった、という方もいらっしゃいます。家の年齢に換算すれば、48〜49歳。そろそろあちこちに不具合が出て、人間ドックに行かねばならなくなる年齢です。耐震診断では、建築から10年を過ぎると経年劣化の点数が付くようになります。2000年には建築基準法が改正になっており、耐震基準が見直されましたので、それ以前に建てられた家の場合は一度専門家の方に診てもらった方が良いでしょう。
耐震診断においては昭和56年以前に建てられた建物なのかどうかが1つの目安になります。昭和56年以前に建てられたものは「旧耐震」、それ以降に建てられたものを「新耐震」と呼んでいますが、「旧耐震」については国や都道府県の耐震診断を無料で受けられるようになっています。「新耐震」の場合は有料の耐震診断を受けることになります。
耐震診断をすると、家がどちらに倒れるかがわかります。家には強さの中心「剛心」と重さの中心「重心」があります。耐震診断をすれば剛心・重心が明らかになり、家の構造がわかります。すると家の揺れる強さ、揺れる方角も明らかになるのです。
剛心と重心が重なると家は揺れにくく、理論的には真四角に近ければ近いほど家は丈夫になるのです。実際には家は様々な形をしていますので、耐震診断をして家の特性を掴んでおくことが必要になります。
今までに大きな地震は3つありました。関東大震災はお昼時に起こったので火災が頻発し、多くの方が火災で亡くなりました。阪神淡路大震災は早朝に起こりました。多くの方が眠っていたので、家の倒壊による被害が大きくなりました。そして東日本大震災は14時46分に起こっています。こちらは津波による被害が甚大なものになりました。
どのような事態に備えたら良いのか迷うと思いますが、まずは自分でできることから始めましょう。家族で震災時にどう対処するか話し合うことも大事です。「考えてはいるけど話し合いを実践していない」という方も多いと思います。待ち合わせ場所、家族の役割分担などを確認しておきましょう。また、避難場所まで実際に歩いて危険箇所を確認しましょう。一度アクションを起こしておけば実際の時の対処も変わってくるはずです。「天災は忘れた頃にやってくる」と言われます。いつ来てもいいようにきちんと備えをしておきましょう。
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- [コラム著者]矢野克己
- 一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。