贈与と二世帯住宅

「非課税枠」に注目しよう!

税金

ラジオ番組では斉藤リョーツさんが住まいのスペシャリストに話を聞く「教えて、達人!」というコーナーもあります。この回は「贈与と二世帯住宅」について、渡邊浩滋総合事務所(わたなべこうじそうごうじむしょ)の税理士・司法書士、渡邊浩滋さんに話を聞きました。

斉藤 まず、贈与とはそもそもどういったものなのでしょうか。

渡邊 「生前贈与」という言い方もしますが、お亡くなりになる前、生きているうちに物を渡すのが「贈与」になります。これには「贈与税」という税金が関わってきますが、では贈与税とは何か。実は「相続税」と密接に関係しておりまして、「贈与税とは相続税の補完税である」と言われます。亡くなった時、その財産について相続税がかかります。それならば生前に渡してしまえ、亡くなった時の財産を減らしてしまえば相続税はかからないだろう、と考えるのが普通だと思います。生前に贈与してしまえば、相続税は免れられるのではないか、と。当然、それを許すと相続税は取れませんので、贈与した分は贈与税という形で、相続税の代わりになるものとして取りましょう、というものです。

斉藤 相続税というと、お金をいっぱい持っている方はいっぱい持っていかれちゃう!みたいなイメージがありますが。

渡邊 当然、財産がたくさんあればあるほど高い税率が掛かります。ただ、相続税は段階的な税率になっていて、10~55%の税率が財産額に応じて掛かるのです。当然、全員が高い税率ではなく、10%ぐらいの方も多いと思います。

斉藤 持っている物の大きさによって変わるというわけですね。贈与税の場合も?

渡邊 金額によります。ただ、相続税より、財産額が低くても高い税率になっております。もちろん低い税率もあるのですが、すぐに高くなる構造になっているのです。

斉藤 孫の教育費として贈与された1000万円は非課税になるというニュースを見ました。ウチには関係ないな、と思いましたが(笑)、この辺りの税率は複雑になるのですね。お家を買う時に親に援助してもらうというのはよくあるパターンだと思いますが、これは課税されるのですか。

渡邊 基本的には課税されるのですが、要件を満たせば非課税になる特例があります。「非課税枠」というのがありまして、今年の贈与で、一般の住宅であれば1000万円まで非課税。ちょっと良質な住宅であれば1500万円まで非課税となっております。

斉藤 住宅の価格によって違うのですか?

渡邊 住宅の質です。例えば耐震基準などを満たしていれば1500万円まで非課税になります。

斉藤 例えば遺産をたくさん持っている親御さんがいる場合は、事前に非課税ということで話し合って出すものを出してもらった方が税金的にはお得なんですね。

渡邊 そうなんです。普通の贈与をした場合は、年間110万円までは贈与税が掛かりません。基礎控除になります。ただ、一般の贈与で、亡くなる前、3年以内に行った贈与は、すべて相続税課税されてしまいます。つまり、亡くなる直前に贈与してもあまり意味がない。

斉藤 それは……親とどういう話をすれば良いですかね!? ある程度高齢になれば先のことはわからないし。たまたま親が「贈与するよ」ということになっても、2年後に天に召されてしまったら……。

渡邊 相続税として課税されてしまいます。

斉藤 ええっ!?

渡邊 だから、贈与は早めにしておいた方が良いのです。

斉藤 まず、ここがポイントですね。親御さんが元気なうちに話をして、住宅が非課税だったら「元気なうちに、早めに」と。「ウチの親、そろそろ危ないぞ」と焦ってやっても意味がないかもしれない。

渡邊 ただ、先ほど申し上げた住宅の非課税に関しては、3年以内だったとしても相続税課税がされないという特例になっておりまして、相続対策としてはかなり有効です。

斉藤 母親と父親、それぞれから贈与されて、金額が違っていても、合計1000万円以下なら非課税なわけですね。

渡邊 そうですね。ただ、もらった金額に対しては名義を入れないといけません。

斉藤 もう一つお伺いしたいのが、最近多い二世帯住宅です。昔から住んでいる土地に、親と息子夫婦が家を改築して住むとなると、名義が複雑ですね。土地は親の名義、上物は半分は子供で半分は親、とか。

渡邊 名義に関しては「どういうふうにお金を出すか」で決まってきます。親御さんと半々で出すということであれば、2分の1ずつ名義を持つのが原則です。親御さんが全部出すのであれば、名義は親御さんの物になります。そこに息子さん夫婦が住んでも問題はありません。

斉藤 じゃあ、家の名義を息子に譲る場合は。

渡邊 贈与という形になりますね。

(この項、続きます!)

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[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

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