二世帯住宅のメリット・デメリット
前回の続きです! 税理士・司法書士である渡邊浩滋さんにお話を伺います。
二世帯住宅の“利用価値”を考える
斉藤 実家を建て直す場合、相続よりも親が生きている間に贈与してもらった方がいいのか、亡くなってから相続するのがいいのか、これはどちらになりますか。
渡邊 ケースバイケースです。前回述べた住宅に対する非課税の特例を使う場合もあれば、考え方によっては、全部親のお金で建てるのも相続対策にはなる。というのも、例えば5000万円の現金を持っていれば、5000万円に対して相続税がかかります。その5000万円を使って家を建て直すと、家の相続財産という形になるので、相続評価としてはだいぶ下がるのです。もしかしたら3000万円ぐらいの評価になるかもしれない。するとそちらの方がいいのではないか、となりますから、ケースバイケース。ご相談していただきたいところですね。
斉藤 親御さんがご健在の場合は良いのですが、どちらかお一人の場合、子供が親の面倒を見る形で二世代住宅に住む場合もありますよね。二世帯住宅を考える場合、お金の面から見たメリット・デメリットがあると思うのですが。
渡邊 実は今、二世代住宅は注目を集めています。なぜなら相続対策として有効だからです。特に土地を持っている方は相続税が高くなってしまうんですけれども、「小規模宅地の特例」というのがあります。土地を自宅や事業用に使っていると評価が下がるのですが、自宅の敷地の場合は330㎡(百坪)までであれば80%減額されるのです。1億円の土地でも、330㎡以下であれば、2000万円の評価になる。ただ、要件がありまして、息子さんが相続する場合は同居しているか、息子さん自身の持ち家に住んでいない(自宅を所有していない)か、主にこの2つのどちらかをクリアしなければ80%減額を受けられないのです。でも、同居するのはなかなか難しいですよね。そこで二世帯住宅が登場します。以前は二世代住宅でも、ある要件を満たさないと80%減額を受けられなかったのですが、平成26年から二世帯住宅であればすべて80%減額を受けられます、という形になりました。なので、これは相続対策になる。しかも、同居と言っても居住スペースは分かれているので、同居のハードルも低くなるということで、注目されているのです。
斉藤 なるほど。最近の住宅展示場も二世帯住宅が多く見られますね。
渡邊 相続対策になるということで売り出していますから。
斉藤 デメリットの部分はいかがでしょう。
渡邊 特に税金に関してはデメリットはないのですが、二世帯住宅では家の構造が特殊になります。相続税は安くなっても、「その後」を考えると悩ましいのではないか、と。
斉藤 「その後」と言いますと?
渡邊 例えば、親御さんがお亡くなりになられた場合。親御さんが使っていた部分が丸ごと空くことになります。もったいないですよね。では、賃貸にするのか、しかし賃貸にできるのか。売却しようにも、二世帯住宅の構造で買ってくれる人がいるのかどうか。
斉藤 利用価値ですね。どう使うのか。今は良いけど、10年後に親が亡くなってしまった時にどうするか。デメリットも考えなければならない。
渡邊 そうです。相続対策という目先の利益だけで判断しない方がいい。色々なことも想定しながら二世帯住宅にするのかどうか判断していただきたいですね。
斉藤 親御さんが元気なうちに、5年後、10年後を見据えて土地や財産の話をできるかどうかですね。そして先生がおっしゃったように法律が変わったりするので、ケースバイケースで勉強しながら、ある程度考えがまとまったら先生のような専門家に相談するのが一番。そこから選択肢も見えてきますね。
渡邊 はい。それも、できるだけ色々な専門家の方に相談してほしいと思います。例えば税理士に相談すると税金の話ばかりになって、相続税対策になるから良い、というアドバイスしかもらえない。しかし、二世帯住宅にはデメリットもあるんだよ、というアドバイスももらえないと、偏った対策になってしまいます。その意味で色々な専門家の意見を聞くのが大事だと思います。
斉藤 そうですね。最近、二世帯住宅に関する相談で多い質問はありますか。
渡邊 二世代住宅も含めて、建て替えのご相談は多いですね。「相続税が上がったので、建て替えを考えた方が良いのでしょうか」とか。
斉藤 建て替えて二世帯住宅にすればいいのか否か。
渡邊 それだけでアドバイスはできないので、どういった家族構成で、相続税がどれくらいなのかをトータルで考えないといけません。
斉藤 親御さんがどれぐらい財産を持っているのか、トータルで考えて最善の策を講じなければいけないんですね。税理士以外にも住宅の専門家に話を聞く必要があるけど、どういう方向性なのかを明確にしておく必要がありますね。家族で話し合って。
渡邊 大事ですね。
斉藤 国としても、親と同居したり介護をしたりする人達を取り巻く法律を改善しているということですね、現在進行形で。
渡邊 そういう流れになっていますね。
斉藤 大変勉強になりました。本日はありがとうございました。
バスター矢野のワンポイントアドバイス
リフォームでも、二世帯住宅に作り替えたいという方が増えています。最近では性能向上リフォームの一つに「可変性」というものがあります。最初から間取りを自由に変更できるように作るのです。親御さんが亡くなって、子供さんも家を出るというように、家族構成は変わっていきます。その時々の人数に適合して家を作り替えよう、というものですね。制度なども変わっていきますので、住宅の専門家に相談すれば、良いアイデアがもらえるのではないかと思います。
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- [コラム著者]矢野克己
- 一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。