防犯スポーツプロジェクトの取り組み
子供達に防犯を“疑似リアル体験”させる!
今回の「教えて、達人!」コーナーでは、「防犯スポーツプロジェクト」の最新情報をお伝えします。ゲストはNPO法人ファンズアスリートクラブの理事長・井上秀憲さんと、防犯芸人集団ツナコメ代表の箸休めサトシさんです。
斉藤 最近では「地域スポーツ」という言葉をよく耳にするようになりました。
井上 2015年10月1日に「スポーツ庁」が日本にできまして、長官には鈴木大地さんが任命されました。オリンピック・パラリンピックに向けての活動、競技力の向上、そして「スポーツと社会を結びつけよう」というのが活動の軸になっています。防犯スポーツプロジェクトにとってもタイムリーな出来事でした。
斉藤 行政が後押ししてくれているわけですね。
井上 元々は、防犯と言えば警察、各市区町の地域振興課などが単独で取り組むことが多かったのです。例えばファンズアスリートクラブであれば、地域振興課やスポーツ室とやっていましたね。ツナコメさんであれば神奈川県警。大きく分けて2本の軸になっていたものが、スポーツ庁ができて融合が進むと思います。
斉藤 活動がしやすくなるということですね。一方、「防犯スポーツプロジェクト」はずっと以前から進化を続けています。様々なアイデアを盛り込みながら様々な人達が参加しているということですが、箸休めさんもその一人ですね。新しく改良されたところを教えてください。
井上 犯人が空き家などに隠れていることを子供達に想定させて、テントに隠れている犯人役に捕まらないようにしながら、どんな人だったかを観察して大人に知らせる「モニタージュラン」というのをやっています。ところが、一人で行かせると、泣いちゃう子が出てきたりして。
斉藤 リアルな犯人役が怖かったんですね。
井上 ツナコメさんや鼻矢印永井さん(ギャグ芸人)に犯人役をお願いすると、テンションが上がり過ぎちゃって。
箸休め 子供がついて来れなかった(笑)。
斉藤 でも、リアルを想定するなら身の危険を感じるぐらいでちょうどいいわけですよね。
井上 お母さん達からすると「ウチの子って、こういうことでも泣いちゃうんだ」と認識できたりするんです。だから子供がいっぱい泣いているのに、親から苦情は一個もない。ただ、やっぱり一人で危険に接近するのは良くないことなので、新たな取り組みとしては友達と二~三人で行くという想定にしています。
斉藤 下校時に一人で帰らない。子供達の生活に密着したシチュエーションですね。その後、モニタージュランはどうなりましたか。
井上 今では小学生だけでなく、幼稚園の子でも行っているのですが、「ここを見てきてね」と一人で行かせた時はほとんど覚えていませんでした。でも、二~三人で行くと「靴を見ろと言われなかったっけ?」など、友達同士で言い合うので、ちゃんと見るようになったんです。
箸休め すごいですよね、靴下の色まで覚えてきたりして。
斉藤 子供同士でどんどん成長するんですね。逆に子供達の行動を見て教えられる部分もありそうです。
井上 小学校などでイベントをやらせてもらった時は、「この人は悪い人役」とわかってもらうために、箸休めさん達にオープニングコントをいきなりやってもらったこともあります。
箸休め 誘拐防止コント、防犯コントですね。鼻矢印永井君が子供役で一発ギャグを公演でやっていたので、僕が怪しい人になって、防犯要素を組み合わせました。
斉藤 子供達に防犯知識を教えると共に、芸人魂として笑いも取りたいですよね。
箸休め そうです、そこが難しいところで(笑)。あまり笑わせてもいけない……そんなに笑いは取ってないけど(笑)。
井上 永井君の一発ギャグは、公演後に子供達が真似してましたね。
箸休め そうなんですよ。「はーなやじるしなーりの、いっぱつ~ギャグ~♪」って。
斉藤 へえ! 子供達は面白くないと取り入れませんよね。
井上 箸休め君が犯人役で子供を連れていくんですけど、その時永井君が「連れていかないで~!」って歌うように言ったら、子供達にドカンと受けましたね。
斉藤 じゃあ、防犯コントは成功したんだ。子供が見て、自分からちゃんと声を出したんですものね。
井上 今までやっていたネタも少しずつスケールアップしています。例えば「バックスチール」という、後ろを気を付けて背中を取られないようにする練習をしていたのですが、ランドセルを背負っているから死角が大きいんだ、ということに気がついて、リュックの先に紐を付けて後ろから取る、というようにルール改正を行いました。おおだこポリス(神奈川県警のキャラクター)の歌で準備体操をしたりもしましたね。
箸休め おおだこポリスの、誘拐防止の曲に合わせて。みんなで盛り上がりましたね。みんなで体操しながら「お」おうちの人に「行ってきます」、「お」お友達と遊ぼうね、「だ」騙されてついていかない、「こ」怖くなったら大声で、と。これをちゃんと覚えてもらうために踊りと一緒に歌ったんです。楽しくないと覚えないですから。
斉藤 体で覚えるということですね!
井上 しかも、踊りみたいな動作についても、「きちんと関節を使って腕を振ると上腕二頭筋に効く」といった分析を柔道の日本代表トレーナーである岡田隆さんが行ってくれたり。今、神奈川県は子供達の体力テストがワーストワンなんですよ。そういう子達の体力向上にも使えるな、と。
斉藤 防犯スポーツプロジェクトはやることなすこと全部身になるということですね!
<この項、次回に続きます!>
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- [コラム著者]矢野克己
- 一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。