リフォームで住まいの価値を高める
年数が経った家の価値はゼロ!?
家の価値を判定するのは難しいものです。築年数や立地、リフォームの有無などで価値は変わってきます。今回は「住まいの価値」について、斉藤リョーツさんが不動産鑑定士・住宅診断士の皆川聡さん(あおい不動産コンサルティング代表取締役)にお話を伺いました。
斉藤 築年数で見ると、大きな境目というものはありますか。
皆川 木造の戸建住宅であれば、一般的には20年ぐらいが境目になってきますが、あくまでイメージですね。
斉藤 何年経つと何%下がりますよ、というものではないんですね。不動産鑑定士は家のどの辺りを見て価値を決めていくのですか。
皆川 戸建住宅がわかりやすいと思いますが、一般的には残存耐用年数がどれぐらい残っているかを見ます。さらに現在の使用状況、物的損失、機能的な部分の原価を考慮して最終的な建物の価格を求めます。
斉藤 細かい点をチェックしていって、初めて価値が出るわけですね。そもそも不動産鑑定士というのはどのような時に活躍するものなのですか。
皆川 宅建業者とどう違うの?とよく聞かれます。宅建業者は不動産の仲介・媒介、売主さんと買主さんの手助けをする人。不動産鑑定士は不動産、土地と建物を評価する、不動産の経済価値を求めることができる国家資格です。
斉藤 不動産鑑定士として皆川さんに何かお願いする場合と言うと、例えば家を売りたい時、皆川さんに不動産を診断してもらって、築年数などから価値を弾き出してもらう、と。
皆川 そうです。
斉藤 売買する時に活躍するわけですか。
皆川 あとは金融機関から融資を受ける時。担保評価ということで仕事を受けることもあります。
斉藤 上物と土地がありますと、土地は「一坪いくら」というのがありますけど、上物の価値が家によって違うということですね。
皆川 土地も「一物四価」と言われるように、評価法は色々あります。そういった指標、周りの取引事例なども見て、「ここの地域は路線価に対して何倍の地域なのか」などと判断します。
斉藤 土地も細かく見ていくと難しくなるわけですね。
皆川 特に建物が建てられる土地なのかどうかで違ってきます。消防車が入っていける2mを確保できているのか。袋路などで要件を満たしていないと、建物が建てられない。建築資材置き場や駐車場としてしか使えないとなると、汎用性がないので価値は大きく下がってしまいます。
斉藤 よくありますね、建売で前の方は高くて、奥の方は安い。ちなみに私の家は建売で、10年ぐらい経つものを買って13年住んでいます。ウチは外壁等に無頓着だったのですが、昨年外壁をぴかぴかに直しました。こういった木造23年、外壁リフォーム済みの場合は、評価はどうなのでしょうか。
皆川 今までの建物の評価基準ですと……ゼロです。
斉藤 ゼロ!?
皆川 今までの基準では。貧しい時代から高度成長期までは木造住宅が中心で、国民全員が豊かになるのが目標でした。すると豊かになるにつれて間取りや仕様が変わってくるので、中古住宅よりは新築住宅の方が好まれる状況があったのです。スクラップ&ビルドですね。そのため20~25年ぐらいで住宅が回転していました。これまではそれで良かったのですが、高度成長期も収まり、バブルも弾けて、皆さんの趣味・嗜好も多様化してきた。それで今度は既存住宅をいかに活用するかに注目が集まるようになりました。環境問題も深刻化していますし、人口減少・高齢化も進んでいる。質の高い住宅ストックをどう活かしていくかということが必要になってきます。そういったことを反映させましょう、ということです。
平成12年頃からは「住宅性能表示制度」ができて、平成21年には「長期優良住宅」の認定制度ができていますので、情報開示してより安心して中古住宅を買っていただける基盤ができています。不動産評価にも、そういったことを反映した評価が求められるようになってきています。
斉藤 すると我が家の場合も、法的なものが重要になってくる。
皆川 法定耐用年数は大体22年ぐらいだと思います。
斉藤 今までの基準では上物には価値がなかったけど、これからはちゃんとリフォームをすれば価値が少し付くかもしれない、ということですね。
皆川 そうです。躯体の部分がしっかりしているかどうかですね。木造では、外壁も15年に1回ぐらいは塗った方がいいでしょう。
斉藤 するとウチは遅すぎた?
皆川 気持ち遅いですけど、躯体が大丈夫であれば。
斉藤 外から見たら綺麗なんですよ(笑)。
皆川 壁の中まで見てみないとわかりません(笑)。
斉藤 外壁を塗っていなくて、外から水が入ると柱がやられたりする。そうなると大変なんですね。内部の躯体を守るために外側が非常に重要なわけだ。
皆川 そうです。
<この項、続きます!>
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- [コラム著者]矢野克己
- 一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。