外壁塗装とカラーシミュレーション
非常に便利だが絶対ではない
外壁を塗り替えるとき、従来の壁の色と同じ色を選ぶのであれば何も問題ないのですが、がらっと色を変えようとすると、「どんな色がいいだろう?」と迷うことになります。そんなとき頼りになるのがカラーシミュレーションです。
カラーシミュレーションとは、ソフトウェア上で表示した家の色を次々と変えて見ることで、塗り替え前に色の好みをはっきりさせて仕上がりの雰囲気を掴もうとするものです。モデルハウスや実際に存在する家の画像でカラーシミュレーションを行う業者もあれば、Web上で架空の家を表示して色を変えることができるサービスもあります。最近ではタブレットやスマホなどで気軽に利用できるカラーシミュレーションアプリも出回っています。ただし、架空の家で色を見るわけですから、実際の家とは形が異なります。
画像を取り込んでカラーシミュレーションを行う場合は、実際に存在する家の画像で色を様々に試すことができます。とは言えこのタイプでは家の画像を編集する職人さんが必要になるので、Webやアプリのように気軽に行うことはできません。営業ツールとして業者側が提供する場合は別ですが、工事をする意思がない段階ではなかなか利用できないサービスだと言えるでしょう。
これに対してWebやアプリは気軽に利用することができますし、業者の中にはアプリを利用して営業している所もあります。大抵は1階の壁、2階の壁、屋根、雨樋、軒天などの色をそれぞれパレットから選びます。目の前でパッと家の見た目が変わるので、着せ替えのような感覚で楽しむこともできます。
このように、カラーシミュレーションは外壁の色選びをする場合に強い味方になってくれます。ただし、限界があることも知っておきましょう。
まず、色というのは非常にデリケートなものです。同じ色であっても、パソコンの画面上で見る色と紙の上で見る色は驚くほど違って見えることがあります。パソコンによっても見え方が違います。カラーシミュレーションの色を鵜呑みにすると、実際に家を塗ったとき「全然色が違うじゃないか!」とトラブルになることがあるのです。
もう一つ、壁は画面のように平面ではなく立体ですから、必ず質感があります。艶あり、艶消し、スタッコ、ゆず肌仕上げなどをカラーシミュレーションで完全に再現することはできません。また、カラーシミュレーションの中では壁はいつでもピカピカですが、実際の壁は数年で汚れ、その状態で付き合う期間が長いものです。このため汚れが目立たない色、色落ちしても大丈夫な色を選ぶことも重要になります。景観や街並みとのマッチングを考慮する必要もあるでしょう。実物のサンプルを見たり、実際の景観を眺めたりすることも必要になります。
このようにカラーシミュレーションは万能ではありません。しかし、全体的な方向性を決めるのには役立つでしょう。あとは実際にその色を塗った家を見せてもらったりすれば色の感じは掴めるはず。後でトラブルになることもないでしょう。
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- [コラム著者]矢野克己
- 一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。