モルタルという外壁材について
様々な用途に使える左官材料
モルタルは外壁材の一種です。古くは古代エジプトで使用され、日本では明治時代に使われ始めましたが、最近ではモルタルではなくサイディングを採用するハウスメーカーが増えています。このため最近では次のように壁以外の用途で使われることが多くなっています。
- ブロックやレンガの隙間を埋める目地材
- コンクリート壁の隙間埋め
- 床材
- タイルの下地
- ベランダ・バルコニーの防水仕上げ
- セメント瓦
こういった事情から、一口に「モルタル」と言っても、実際には用途に合わせて石灰モルタル、ポリマーセメントモルタル、アスファルトモルタル、樹脂モルタル、レジンモルタルといったバリエーションが開発されています。
モルタルと言えば熟練した職人さんが仕上げを担当するもので、2層塗りが標準です。さらに完全に乾いたら漆喰や樹脂などによって塗装を行うため、どうしてもコストがかかります。また、施工日数が20日前後かかることもあり、近年ではサイディングを採用するハウスメーカーが増えているのです。加えて、モルタルにはヒビが入りやすいという欠点もあります。このため、もともと構造材料として単独で用いられることはあまりありませんでした。
もちろん、メリットもあります。ます、モルタルは木材と比べて耐火性で勝ります。このため、昭和25年に法律で外壁を防火仕様とすることが定められると、モルタル外壁が一気に普及したのです。また、サイディングと違って継ぎ目ができませんし、ジョイント部分にシーリングを施す必要もありません。さらに、モルタル外壁の家は周囲を一枚岩で包むように施工するので、耐震性が高まります。腕のいい職人がいれば、リシンやスタッコといった特殊な模様を加えることもできます。適材適所で用いれば、頼りになる建材であることがわかりますね。
ちなみに、セメントは石灰石や石膏を焼いて作った粉末素材で、モルタルやコンクリートを作るための材料となります。言い方を換えれば、水と練って使うことで硬化する接合剤がセメントです。セメントに砂と水を混ぜればモルタルとなり、モルタルに砂利や砕石を混ぜればコンクリートとなるのです(実際には様々なタイプに分かれます。砂は細骨材、砂利や砕石は粗骨材と呼ばれます)。
ちなみに、漆喰もモルタルと同じ左官材料ですが、原料はまったく違います。漆喰は石灰に繊維と糊料を練り混ぜたもので、特性も異なります。
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- [コラム著者]矢野克己
- 一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。