長い歴史を持つ堅牢な建材・タイル
かつては「敷瓦」「陶板」などと呼ばれていた
タイルと言えば、お風呂場の内装に使われたり、マンションの外壁に使われたりしているものを思い浮かべると思います。タイルは壁や床に多数貼り付ける板状のもので、対象物の保護あるいは装飾用に用いられます。広義には「繰り返しにより構成される図面の要素」などもタイルと呼ばれ、英語のtileには瓦の意味もあります。
世界最古のタイルはエジプト第3王朝で建てられた「サッカラの階段ピラミッド」の通路に貼られた「青釉(あおゆう)のタイル」なのだとか。日本には寺院の装飾用として6世紀に導入され、名称が「タイル」に統一されたのは大正11年。それまでは「敷瓦」「貼り付け化粧瓦」「陶板」など、様々な名称で呼ばれていました。
建築の世界では、陶磁器製のものがタイルと呼ばれることが多くなっています。材質によって吸水率が異なることもあり、タイルメーカーでは用途に応じて各種タイルを使い分けます。一般的にタイルは防水性に優れているので、たいていは水がかかる箇所に用いられます。特に外壁タイルの場合は、タイル自体はほとんど経年劣化しないのも特長です。
タイルはALCパネルと組み合わせて使用されることもあります。ALC(軽量発砲コンクリート)は、工場で製造される品質の安定した建材で、多孔質(細かい穴がたくさん空いている)なので軽量という特長があります。しかし、穴が空いているということは吸水性が高く、表面が弱いということ。このためタイルを貼ることで耐久性をアップさせるのです。
外壁タイルのメリットは以下です。
- 耐久性が高い
- メンテナンスが楽
- 外見に高級感を持たせることができる
陶磁器製のタイルは経年劣化が少ないだけでなく、汚れや傷に強い建材です。ほとんど水を吸うこともなく、カビなども簡単に落とすことができます。水を吸わないので亀裂や破損といった凍害も起こりません。ゆえにメンテナンスも非常に楽で、これは経年劣化しやすいサイディングと比べて明らかな長所です。
また、最近では様々な意匠を凝らしたサイディングがありますが、本物の外壁タイルの高級感や風格は格別です。現在のタイルにはバリエーションも多いので、自由度の高いデザインが実現できます。
逆にタイルのデメリットは、初期コストが高いこと。一説にはサイディングの倍ぐらいのコストがかかると言います。しかし、サイディングはつなぎ目のコーキングが傷みやすいので、外壁タイルに比べてメンテナンスにコストがかかります。一方でタイルは、かつては接着剤が劣化すると剥離・落下を起こすことがありました。しかし、最近では技術革新によって経年劣化による剥離・落下はほとんど起きなくなっています。トータルコストで考えればタイルにデメリットはほぼないと言えるでしょう。
ただし、タイルは施工が悪いと剥離・落下の危険性があります。外壁タイルは地震にも強いのですが、施工がいい加減では話になりません。施工の際は外壁タイルを得意とする業者を選ぶことは必須でしょう。
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- [コラム著者]矢野克己
- 一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。