燃えない塗り壁材「漆喰」
進化する漆喰調塗り壁
漆喰とは、消石灰(水酸化カルシウム)を主成分とする塗り壁材です。一般的には白くて平滑な壁に仕上がり、屋外にも屋内にも使うことができます。腕利きの職人さんであれば、多彩なコテ模様をつけて仕上げることもできます(ただし、職人さんの腕によって仕上がりの風合いが変わります)。他にも瓦や石材の接着、目地の充填などに使われることがあります。
古来より、漆喰は木造・土蔵の内外壁の上塗り材として城郭、商家、民家、寺社、土蔵などに用いられてきました。不燃素材なので、外部保護材として優れているからです。燃えないということは、火事に強いということですからね。
漆喰には他にも優れた特性があります。
- 調湿効果がある
- 脱臭効果がある
- カビにくい(強アルカリ性のため)
- 防音性が高い
- VOC(揮発性有機化合物)の吸着・分解
VOCについては、シックハウス症候群の原因の一つであるホルムアルデヒドを無害化する効果があります。基本的に自然素材なので、人体への悪影響がないという点でも優れています。
ただし、調湿効果については過度な期待はしない方が良いでしょう。昔は壁の下地が土でした。この下地に漆喰を塗れば壁全体で調湿効果を発揮できたのですが、現在の壁は調湿効果のないプラスターボード(石膏ボード)になっています。プラスターボードに漆喰を塗っても、調湿効果は限定的だと言えるでしょう。
また、漆喰の原料である消石灰は、水を加えて練っただけでは壁に付着しません。粘りがないので、昔は海藻のりや藁やスサといったつなぎ材が使用されていたのです。現在では化学合成接着剤が使われることが多くなっています。さらに、施工直後の漆喰は強アルカリ性なのでカビが生えませんが、5年ほどで中性化すると言われています。つまり、5年過ぎればカビが生える可能性が高まるのです。加えて、乾くのを待たなければならない分だけ、ビニールクロス施工よりも工期が長くなるデメリットがあります。
とは言え、建材も進歩しています。現在では「漆喰調」の塗り壁材が多数販売されていますが、中には一般的な漆喰の2倍以上の調湿性能を備えた漆喰調塗り壁材も登場しています。あえて自然素材にこだわり、海藻のりを採用している漆喰もあります。化学接着剤をまったく使わない、ケミカルレスを実現しているわけです。また、漆喰調塗り壁材にはカラーバリエーションが豊富だったり、高い撥水性を発揮するもの等も登場していますので、目的に合わせて選ぶことができます。
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- [コラム著者]矢野克己
- 一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。