トタン屋根とも呼ばれる瓦棒葺き
雨仕舞いに優れた構造
「瓦葺き」という言葉はよく耳にすると思いますが、「瓦棒葺き」はあまり聞いたことがないかもしれません。実は瓦棒葺き屋根は、瓦屋根ではありません。
材質は亜鉛鉄板などの金属板で、一定間隔(45~60cm程度)で瓦棒と呼ばれる棒状のパーツを設置するので、この名前があります。瓦棒の中には心木(芯木)が入っており、垂木に打ち付けられています。屋根には流れ方向に向かって細い瓦棒が等間隔で並ぶことになります。
金属板葺きには全面を平坦に葺き上げる平葺きという方法がありますが、瓦棒葺きの場合は平葺きに比べて温度変化による金属板の収縮を瓦棒の間で吸収できるという利点があります。
また、瓦棒の間隔を金属板の幅より短くして施工することで金属板に流れ方向の継手がなくなるので、雨仕舞いとしても高い効果を発揮します(瓦棒葺きでは金属板の両サイドを上に向かって曲げ、その上から瓦棒を被せることで防水性を確保する)。このため、急な勾配がなくても防水性を確保できるという特徴があります。
「瓦棒葺き」という言葉はあまり聞いたことがないのではないか、と書きましたが、実は瓦棒葺きは「トタン屋根」と呼ばれることもありました。
昔の瓦棒葺き屋根はトタン=亜鉛鉄板を用いていたからです。現在では瓦棒葺きを施工する場合、ガルバリウム鋼板を使うようになっています。トタンは赤錆が発生しやすいのですが、ガルバリウム鋼板は錆びにくい材料として知られています。
瓦棒葺きを採用するメリットとしては、施工が容易で、工事費が安価なことが挙げられます。現場で金属板を切り貼りすればよく、様々な形の屋根に対応するので、家の周りが狭かったり、道幅に余裕がなくても施工できます。急な勾配を必要としないこともあり、自由度の高い屋根だと言えます。
瓦棒葺きのデメリット
瓦棒葺きは雨仕舞いに優れているという話をしましたが、最大の弱点も雨漏りに関係しています。瓦棒葺きは瓦棒の中に心木が入っています。
軒先から雨が浸入すると心木が水を吸い上げ、腐ってしまいます。心木が腐ると金属部分が浮き上がり、強風でめくれることも起こります(このため心木を用いない瓦棒葺きも登場しています)。
また、金属板の下にルーフィングと野地板を設置する瓦棒葺きでは、断熱効果は期待できません。天井と屋根の間に断熱材を設置することが必要になります。また、雨音が大きい、カバー工法に向いていないといったデメリットもあります。
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- [コラム著者]矢野克己
- 一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。