大型屋根にも強い立平葺き

スタイリッシュなので外壁に使われることも

瓦棒葺きの屋根(トタン屋根と呼ばれることもあります)には、心木が腐ると屋根全体がめくれかねないという弱点がありました。
このため、心木を用いず、金属同士を噛み合わせて瓦棒葺きを実現する屋根も開発されました。しかし、この工法では組立の難易度が上がります。

そこで、さらに改良を加えて誕生したのが立平葺き(たてひらふき。「縦ハゼ葺き」「縦平」「縦葺き」「竪ハゼ」「長尺屋根」「嵌合(かんごう)式立平」とも言う)です。
立平葺きはその名のとおり、一枚の長尺板金を縦に流していき屋根を葺く工法です。素材には主にガルバリウム鋼板が用いられます。

瓦棒葺きとは異なり、立平葺きでは心木を用いず、二つの鋼板の両端を折り曲げ、巻き込んで接合します(ハゼ)。このため瓦棒葺きと比べ、瓦棒に当たる部分(縦ハゼ)が細くなり、よりスタイリッシュな外見になります。大型の屋根に用いると特に有効な工法ですが、シンプルでモダンな住宅にもよく合います。最近では外壁に利用されることもあります。
瓦棒葺き屋根と同様、立平葺きも雨漏りに非常に強い構造をしています。ハゼ部分の防水にも
気を配っているメーカーの製品を選べば、雨漏り対策はさらに万全になります。

メリット・デメリット

立平葺きには、他の屋根と大きな違いがあります。材料の扱い方が違うのです。

他の屋根材の場合は一定の長さが決まっています。したがって、現場では屋根職人が屋根に合わせて切り張りする作業が必要になります。
瓦棒葺きであれば心木の取り付けも必要です。一方、立平葺きの場合は、最初に屋根の採寸を済ませ、あらかじめ板金工場で加工したものを現場に運んで使用します。

つまり、立平葺きであれば板金を張る作業だけで屋根が完成するので、他の屋根に比べて短期間で工事を終わらせることができるのです。工事費も安く、廃材もほとんど出ません。軽量なので耐震性に優れ、雨に強いので緩い勾配でも問題なく実用に耐えます。また、ドーム型に加工することもできます。太陽光パネルや室外機などを屋根面に設置しやすいのもメリットです。

デメリットとしては、瓦棒葺きと同様、金属屋根なので断熱性に劣ること、雨音が響きやすいことが挙げられます。
また、複雑な形状をした屋根の場合には職人が現場加工をした方が効率が良く、工場で作られる立平葺きには向いていません。
さらに、継ぎ目がない一枚の板の状態で運搬されるので、現場近くで荷下ろししたり、大型トラックを駐車したりできるスペースを確保する必要があります。

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[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

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