安い費用で高い強度を持った屋根材『折板屋根』
断面から見ると凸凹した金属屋根
折板(せっぱん)という言葉は折半(半分に分けること)と似ていますが、こちらは金属屋根でよく用いられる工法の一つです(折版とも書きます)。折板屋根は断面から見ると凸凹した形をしていますが、それは断面の構造に重点を置いて開発されたからです。大型の屋根、あるいは長尺の屋根にも調和する意匠性、強度、経済性を考慮して設計されており、工場や体育館、倉庫などによく用いられます。身近なところでは折板で作られている車庫の屋根を見掛けることがあるかもしれません。使われる鋼板は0.6~1.2ミリほどの厚さです。
折板の種類
折板は大まかに言うと次のような工程で施工されます。
・鋼板を折板に成形加工する
・梁の上にタイトフレーム(固定用のフレーム)を溶接する
・タイトフレーム本体の上に折板を乗せ、固定する
特徴としては他の屋根材より長大に成形できること。ゆえに工場や体育館などで有効な工法なのです。折板は梁や母屋に直接施工するので、野地板が必要ありません。このため工期が短縮できるだけでなく、シンプルな構造は雨仕舞いにも優れており、何より強風にも負けない強靱さがあります。
折板には主に次の3つのタイプがあります。
1.はぜ締めタイプ
はぜ締めはボルトを使わず、タイトフレームの上に取り付けた緊定金具を2枚の折板で挟み、ハゼ(馳。折り曲げ部分のこと)を締めてつなぐ工法です。防水性に優れているだけでなく、屋根上からだけで施工が完了すること、ボルトが不要なことから経済的な工法でもあります。
2.重ねタイプ
タイトフレームの上に取り付けた緊定ボルトに2枚の折板を重ねて設置し、ナットで締め付ける工法。シンプルな分、特に断面の強度が優れています。
3.嵌合(かんごう)タイプ
折板2枚を固定金具(吊子)でタイトフレームに止め、ボルトが出ないように継ぎ目にキャップをはめ込む工法。美観に優れ、様々な用途に用いられます。
折板のバリエーション
他にもバリエーションとして二重葺きタイプや湾曲加工を加えたものがあります。二重葺きタイプは折板を二重にし、その間に断熱材を挟み込む工法。室内温度を保ち、外部の騒音を軽減することで居住性を高めます。湾曲加工は軒先や屋根全体を丸くすることで風雨の吹き込みを防止したり、雪やつららの落下を誘導します。また、一般的な建物と一味違った意匠を獲得するのにも役立ちます。
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- [コラム著者]矢野克己
- 一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。