二つの屋根面が接合する部分『棟』
一般的な「棟」
「棟」という言葉は親しみがあるものですが、ちょっと考えてみると様々な意味を持つことに気がつきます。今回は「棟」というものについて詳しく見ていきましょう。
「棟」を「むね」と読む場合は屋根の天辺にある部位のことを指します。『デジタル大辞泉』では次のように解説されています。
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◇1.屋根の最も高い所。二つの屋根面が接合する部分。位置と構造により、大棟・降棟(くだりむね)・隅棟などとよぶ。
「一棟(ひとむね)」と言った場合は次のような意味になります。
◇一つの棟。1軒の建物。また、同じ棟。いっとう。
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ここで「とう」という読み方が出て来ました。「棟」という漢字は「むね」以外に「とう」「むな」とも読みます。「とう」は音読みで「むね・むな」は訓読みに分類されます。「とう」には「長いむねの建物」という意味もあり、「病棟(病室のある建物)」と言えば建物のことを指します。家屋の頂上を横に突き通す棟木(むなぎ)のことも「とう」と呼びます。家屋を建てる際に行う儀式である「上棟式(じょうとうしき)」は棟木を上げる時に行われるもので、棟上げ式(むねあげしき)とも言います。
また、「いっとう(一棟)」のように、長い棟を持った建物を数える時にも使われます。マンションなどは一棟、二棟と数えますね。
さらに「棟梁(とうりょう)」と言えば、一族・一門の統率者、大工の親方といった意味になります。棟と梁は家を支える重要な部分なのでこのような言葉が生まれたのです(『大辞泉』)。
建築用語としての「棟」
建築用語として認識される場合は「陸屋根を除く」という注釈が付くことがあります。陸屋根は傾斜のない平面状の屋根ですから、2つの屋根面が接合する分水部分としての「棟(むね)」はないわけです。
棟を中心に四方に流れを持つ屋根形状を「寄棟屋根(よせむねやね)」と呼びます。また、棟から両側に勾配屋根がある(側面・妻側は壁になっている)場合は「切妻屋根(きりづまやね)」と呼ばれるのですが、寄棟屋根と切妻屋根を組み合わせた形状の屋根は「入母屋屋根(いりもややね)」と呼ばれます。
入母屋屋根では上部が切妻造りのように二方向に勾配を持ち、下部は寄棟造りのように四方向に勾配を持ちます。入母屋の例でわかりやすいのは寺院や城郭。奈良時代より後になると重要施設はすべて入母屋で統一されるようになったそうです(『日本大百科全書』)。
(参考:サイト「住宅建築専門用語辞典」)
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- [コラム著者]矢野克己
- 一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。