破風に使用する瓦『棟巴』

「巴」はもともと伝統文様の1つ

屋根用の役物板金には実に様々な種類があります。棟巴(むねどもえ)もその一つです。
日本の伝統建築では、破風(切妻に付いている装飾板)に使用する瓦のことを「棟巴瓦(むねともえがわら)」と呼びます。また、「巴瓦」と言えば棟巴瓦・掛巴瓦(かけともえがわら)・隅巴瓦(すみともえがわら)・拝巴瓦(おがみともえがわら)の総称。巴瓦は軒丸瓦(のきまるがわら)とも呼ばれ、多くが先端に巴(勾玉かコンマのような形をした伝統文様の1つ)の紋を付けたのでこの呼び名になったそうです。
棟巴瓦はだいたい先端が丸い形をしていて、棟の端を覆うようになっています。板金の棟巴では形状に「巴」の名残はなくなり、機能重視になっているものが多いようです。
棟を形成する板金は「棟板金」「棟包み板金」などと呼ばれます。棟巴であれば、屋根の最も高い部分である棟の端を防護する板金になります。ここではスレート屋根やガルバリウム鋼板屋根などに施工される棟板金について見ておきましょう。

・材質
以前は金属屋根と言えばトタンでしたが、最近ではガルバリウム鋼板が人気となっています。棟板金もガルバリウム鋼板が多くなっています。ただし、一部には銅製・ステンレス製のものもあります(後述)。

・機能
棟は鋭角になりますので、スレート瓦やガルバリウム鋼板などを施工すると接合部や隙間ができます。隙間があれば雨水が浸入してきますので、屋根には必ず防水施工が施される他、雨水をコントロールして外に排出する仕組みが採用されています。これを雨仕舞いと呼びますが、棟板金も接合部を覆うように配置され、雨仕舞いに一役買っています。

また、屋根裏の換気を行うことも棟に期待される機能の1つです。換気機能付きの棟板金がありますが、それは屋根裏が密閉空間になっていると湿気や高温が籠もりやすくなるから。換気機能がないと屋根裏内部が傷みやすくなりますし、場合によっては2階以上の部屋が高温にさらされることもあります。

瓦以外の棟

金属屋根の棟板金は次のような材質で作られています。

・ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板はアルミニウム、亜鉛、シリコンから成るアルミ亜鉛合金めっき鋼板です。アルミニウムは耐食性、加工性、熱反射性、耐熱性に優れていることで知られますが、犠牲防食作用(傷付いた時に鉄より先に溶け出して表面を守る作用)を持つ亜鉛と組み合わせることによって相乗効果が得られます。

・ステンレス
ステンレスは不動態皮膜(金属表面にできる薄い耐食性を持つ膜)を発生させる金属で、耐食性、強度、耐久性すべてにおいて優れています。ただし高価なのであまり使用されていません。

・銅
銅はメンテナンスがほとんど必要ない金属です。神社仏閣の屋根には銅製のものが多く現存します。ただし、金属系屋根材の中でも特に高額な部類になります。

(参考:サイト「住宅総合研究所」)

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[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

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