棟を覆う板金『棟コーナー』
棟を覆う板金
和瓦もスレート瓦も、屋根材として期待される機能は同じですが、構造や特徴は異なります。表面だけ見ても、瓦屋根であればがんぶり瓦、鬼瓦、巴瓦、のし瓦、桟瓦、一文字瓦、けらば瓦など、一つの屋根で多彩な瓦が使われます。一方、スレート屋根の場合は瓦屋根に比べて比較的シンプルな構造になります。また、スレート屋根等では瓦屋根であれば瓦で覆われていた棟やけらばなどには様々な板金が使われることになります。棟コーナーもその一つです。
棟コーナーの板金は隅巴板金と形が似ていますが、棟コーナーは瓦一列ごとに、隅棟(降棟)部分に下から順に並べて取り付けられるもので、隅巴のように先端部分が大きく立ち上がってはいません。隅棟の隙間を覆うことで雨水の浸入を防ぐのが棟コーナーの主な役割です。
棟コーナーの側面部分は内側に折れ曲がっています。このような工作法のことを、板金の世界では「仇折り」「徒折り」「空折り」「無駄折り」「水返し」と呼ぶことがあります。板金の上端部の場合は外側に折り曲げますが、これは板金が波打つことを防いだり、板の切断面で怪我しないようにする意味があります。下方に向かう形状の場合は水を戻すことを期待して「水返し」と呼ぶことがあり、内側に向かってレの字に曲げることを「無駄折り」、完全に折り曲げることを「全つぶし」、コの字型に折り曲げることを「半つぶし」と呼んだりします。
石川廣三『雨仕舞の話』によれば、上端部の折り返しもV字型の場合は「水返し」と呼ばれることがあり、這い上がってくる水を外側に戻すことが期待されていますが、実際には施工時に潰れたり、防水紙や下葺材などが密着して施工されるので、水返し効果はあまり期待できないそうです。
●棟コーナーの施工
スレート屋根で隅棟を処理する場合は、「棟包み」で処理する場合と「棟コーナー」で処理する場合があり、屋根材のメーカーによって細かな仕様が決まっています。棟包みは大きく、数列の瓦を覆います。隅棟の際では四角い瓦をそのまま使うことができないので瓦を切断しますが、棟包みの場合は切断した瓦の棟側の端をさらに少し切ります(切落とし、隅切り)。これに対し、棟コーナーの場合はそれぞれの棟コーナーが各列の瓦と組み合わさるのですが、瓦の端を切り落とすことはしません。これは、棟コーナーや屋根材が飛散することを予防するためだと言います。
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- [コラム著者]矢野克己
- 一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。