“安くて早い塗装工事”がなくならない理由

良かれと思って不良施工が量産される!?

チョーキング現象

前回は手抜き工事についてお話ししましたが、なぜこのような不祥事が起こるのかご説明しておきます。
新築でもリフォームでも、大工さんや職人さんが現れれば皆さんは「専門家が来た」「プロの人が来てくれた」と思うはずです。
ところが現在の日本では、500万円以下の工事であれば、建設業の許可がなくとも誰でも工事が可能なのです。建設業法第3条には、建設工事を請け負うには建設業の許可を得なければならないと明記されています。ただし、「軽微な建設工事」は例外なのです。

  1. 建築一式工事…工事1件の請負代金の額が1500万円未満の工事または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事。
  2. 建築一式工事以外の建設工事…工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事。

以上の工事は「軽微な建設工事」と認定されます。この要件には、リフォーム工事の大半が含まれることがわかりますね。このため、かなりの人が勝手解釈・自己基準で工事を行っているのです。特に塗装に関しては、免許も必要ない。この事実を多くの人は知りません。施主の方々は業者を信用しすぎているとも言えるのです。

加えて、多くの「不良施工業者」は悪徳業者ではありません。住んでいる人のために良かれと思って工事をしています。しかし、残念ながらそれが勝手解釈・自己基準なのです。

32坪ぐらいの家の屋根・外壁を塗り替えようとすると、大体2週間ぐらいかかります。塗料には乾燥時間が決められているので、本来短縮はできません。しかし、実際には7日ほどで完工してしまう業者がいるのです。ここには構造的な問題も潜んでいます。職人さんや塗装業者は下請けの場合がほとんどです。元請業者は工事を丸投げすると法律違反になるので、材料などは元請けで用意します(バラ発注と言います)。すると職人さん達は手間請けとなり、報酬は工賃だけになる。そのため件数をこなした方が稼ぎが良いので、たくさん働けるように工期を短縮したがるのです。

さらに、お客様の方でも「早く工事を終わらせてほしい」という要望があります。工事中は小さな子供がいるので行動に注意を払わねばならなかったり、洗濯物が干せなかったり、不自由が多いのです。工事の人達にお茶を出そうと思えば、出かけることもできません。それで工事をする側は「わかりました、工期短縮でやりますよ!」と、親切心から工期を繰り上げて安上がりな工事を行ったりするのです。そのような工事は言うまでもなく不良施工なのですが、親切な業者の人達が安い費用で工事をしてくれるので、お客様は気づきません。そして安い業者は高い業者を「ぼったくりだ」などと批判するわけです。「ウチは薄利多売で良心的にやっているんです。しかも工期も短いですよ」と。しかし、最近の塗料は耐久性・機能性ともに向上して扱いが難しくなっており、きちんと勉強しておかないと簡単に不良施工になってしまいます。このことがわかっていない業者もいるのです。

値段が高いのには高いなりの理由があります。安いのにも理由があります。現在、リフォーム工事のクレームの中で、屋根・外壁の不具合は5割を超えたという統計もあります。お客様にはまず業者選びから慎重に行ってほしいと思います。

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[コラム著者]矢野克己
矢野克己
一般社団法人市民住まい向上委員会代表理事、「住まいのトラブルバスター」(ラジオ日本)パーソナリティ。主な経歴として建設業界30年、建物診断約7,000棟以上、施工実績約4,000棟、セミナー・相談会等の講演や研修等実績300回以上。
市民住まい向上委員会とは「防犯・防災・住宅性能の向上等を一般市民に対し普及、支援活動を行う」事を目的として活動する非営利団体で、安全で安心して暮らせるような住まいの実現を目指し、啓発活動やセミナー講演、イベントなどを行うだけでなく、相談会・メール相談・面談なども行っております。

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